ちょっと前の話になりますが、8月10日にNHK-FMの「今日は一日○○三昧」シリーズの一環で「今日は一日ゲーム音楽三昧ツヴァイ(2の意)」が放送されました。自分は配信をやりながらの聴取だったのですが、懐かしい曲がかかったり、往年の名曲に携わった方々のトークが聞けたりであっという間の10時間半でした。
「三昧」では放送した曲のリストをウェブ上で公開してまして、それのデータなんかをまとめつつ色々と考えてみました。
まず個人的に思った良かった所、悪かったところをまとめてみます。
「今日は一日ゲーム音楽三昧」ツヴァイの良かった所
「らじるらじる」を使えばネットで聞ける
NHKのラジオは第1第2、そしてFMともに「らじるらじる」という名称でネット配信が行われています。放送はNHK-FMのページに行き、ページ左上の「いますぐ聞く」という箇所をクリックすればOK。原則電波で飛ばしているものと同じものを流していますので、音楽番組などを聞くだけではなく台風の接近時や地震の発生時などにも重宝します。
Twitterでの一体感
これはやはりネットの時代ゆえ、というところですね。「#zanmai」というハッシュタグでは当時のことを振り返る人たちのツイートだけではなく、実際に曲を作った人のツイートも飛び交うという状況に。もっともそこでNHKの誤りなどを指摘することも多々あったのですが……。
なお、#zanmaiのハッシュタグは「今日は一日○○三昧」用のハッシュタグなので、8月16日には「アイドル三昧」のツイートがズラリと並ぶことになります。
曲の制作に携わる人がゲストで、制作の裏話などが聞けた
ウェブラジオやイベントでは最近行われるようになってきたものの、「ラジオ」という場でゲーム音楽に携わる方へフォーカスが当てられるケースは少ないだけに非常にポイントが高かったと思います。まさかNHKで同時発声3音云々という話が聞けるとは思っても見ませんでした。
今回は伊藤賢治さん、すぎやまこういち先生、慶野由利子さん、ZUNTATA、Blind Spotというゲストで伊藤さん、すぎやま先生が「家庭用」、ZUNTATA、Blind Spotが「業務用」、慶野さんが「両方」というような立ち位置でした。ゲームミュージックバンド全盛期を経験してきた自分としてはZUNTATA、とS.S.T.BAND(あえてこう書きます)が数十年ぶりに共演したという意義はものすごく大きい物だったと思います。
24年の時を超えた競演
Blind Spotのライブで「Wilderness」がかかりました。これはゴールデンアックスの曲なのですが、直前の曲がギャラクシーフォースIIの「Beyond the Galaxy」でした。
この「Beyond the Galaxy」~「Wilderness」とつながるのはアルバム「S.S.T. Band LIVE!」の流れなんですよ。そしてこのライブ盤は1990年8月25日に日本青年館でZUNTATAと競演したライブで収録したもの。さらにBlind Spotのトーク中にはこのライブ盤に収録されている「アフターバーナー」までかかりました。
日本青年館とNHK。数十年の時を超えてのZUNTATAとS.S.T BANDとの競演が実現した、という意味で非常に大きな意義のある放送だったと思います。
※24年というのは日本青年館から、という意味です。
「今日は一日ゲーム音楽三昧」ツヴァイの気になった点
「アレンジ版」の問題
リクエストが「アレンジ版をかけてくれ」と書いているわけではないのにアレンジバージョンをかけたりしているケースがありました。
ゲームミュージックの難しいところは「オリジナル版」「オリジナルとは別のゲームに収録された版」「アレンジ版」があり、かつ「アレンジ版にも複数のバージョンがある」ということです。
例えばアウトランの「Magical Sound Shower」などは
- オリジナルバージョン
- アレンジバージョン
- アレンジバージョンのリズムパートをリテイクしたバージョン
- ライブバージョン
- セガサターン版に収録されたリミックスバージョン
などがあります。(もう2バージョンくらいあったような記憶がありますが)
またオリジナルバージョンに関しても複数のゲームハードでリリースされているゲームであれば「ファミコン版」「アーケード版」「セガマークIII版」と細分化されることになりますし、もっと言うと「セガマークIII版」にも「内部音源版」と「FMパック版」という細分化もされていくわけで……。
ただこの手の番組でのリクエストの場合、ゲームで聞いた曲をもう一度聞きたくてリクエストしているわけですから明確に「アレンジ版で」と書いていない限りはオリジナル版をかけるのが筋なような気がします。そもそもアレンジ版はサントラCDを聞いたことがない人にとっては存在すら知らない曲ですからね。
曲名を取り違え、訂正もなし
Blind Spotがゲストの時、サンダーブレードの曲がかかりました。その際、作曲担当のBlind Spotの並木さんが目の前にいるにも関わらず、曲名を取り違えています。しかもウェブサイトのプレイリストも間違ったまま掲載されています。(Burning PointをTYPE IIと取り違えている)
このことは並木さんも自身のTwitterで触れています。
今日、オンエアでかかったサンダーブレードの曲はTYPE2ではありませんでした。あれ?と思ったんだけど生だし。Outrideも僕のアレンジ版がかかる予定だったんですが(^_^; 生なんでしょうがないですかね。#zanmai #sstband
— 並木晃一 2nd Solo album『Stratosphere』発売中 (@k_namickey) August 10, 2014
古いゲーム音楽の場合タイトルがわかりづらかったり、CDによって間違ったタイトルが記載されていたりすることもあったので致し方ない部分もありますが、作曲された人がゲストでスタジオにいるのに間違えて、訂正も入れていない、というのはちょっと……と思ってしまいました。
ちなみに番組の最中「ファイヤーエンブレム」と記載されていたタイトルは、Twitterで話題になっていたからか途中で「ファイアーエムブレム」に修正されていました。
曲をYouTubeから拾ってきた?
56曲目にクロノトリガーの「時の回廊」がかかった際にあまり聞き覚えのないバージョンがかかりました。Twitterでも「こんな曲だったっけ?」というツイートがいくつかあり、自分も「クロノ・トリガーってスーパーファミコンのはずなのにこの音はおかしい気がする」と思っていたらどうもこのバージョンがかかってしまったようです。
しばらく後に「アレンジ版をかけてしまったのでオリジナル版をかけ直します」ということでかけなおしていましたが、後にも先にも「間違ってアレンジ版をかけてしまった」という対応をしたのはこの曲のみ。
ゲーム音楽、特に古い曲はCD化されていなかったり、されていても枚数が少なかったり、全曲収録されていないことがちょいちょいあります。しかしクロノ・トリガーはきちんとCD化されていて、しかも時の回廊はしっかりと収録されています。NHKがライブラリを持っていなかったか、スタッフが面倒臭がってYouTube検索で引っかかったのをかけてしまったのかのいずれかに思います。
並木さんも「生だから仕方ない」と上で書いていますが、放送局というプロがやってるわけですからもうすこししっかり……とは個人的に思います。
むしろこの反省を活かして早々に年末くらいに第三弾をですね……(本音)
家庭用ゲーム機の曲が多かったかと思いきやそうでもない選曲
「今日は一日○○三昧」はプレイリストがウェブ上に公開されていますので、ざっとまとめてみました。現状タイトルしかわからない状態なので複数ハードでリリースされているゲームについては「初出がなんだったか」で判断しています。
まず下記は2010年8月放送時にかかった楽曲がどのハードでリリースされていたかをグラフにしたものです。便宜上アレンジ版についても「ベースのゲームがなんだったか」でまとめてあります。ときメモのイメージソング(ベースはゲームだが、ゲームそのものには収録されていない曲)は「その他」としました。
意外にもアーケードの楽曲が多いことが分かります。ただこれは「ラリーX」や「マッピー」など、全曲流してもせいぜい数分という曲が沢山かかったことにも起因しています。
また、Nintendo 3DSやWiiUについてはまだリリースされていないので載っていなくて当たり前なのですが、PlayStation3が一曲もかかっていないのも意外です。
ちなみに一曲だけかかったXboxの楽曲は「ジェットセットラジオフューチャー」、Xbox360は「ロストオデッセイ」でした。
次に2014年8月放送分を見てみましょう。
こちらも相変わらずアーケードが多いですが、理由は2010年と同じで、ディグダグの「歩行音」だけで1曲にカウントされてたりするのでアーケードが多め。ライブ演奏にZUNTATAやBlind Spotが来たのも大きいと思います。
やはり4年という歳月もあって、PlayStation Vitaやスマートフォンアプリなどが入るようになりました。「その他」には湯川元専務の「噂のドリームキャスト」や、慶野由利子さんのオリジナルの楽曲が入っています。Xbox系のゲームの曲は流れませんでした。
メーカーとしてはやはりスクエニが強かった
次にかかった楽曲のメーカーを分けてみました。ゲームの場合「開発元」「販売元」という区別がありますが、販売元、で区分けしてあります。
これはもうまとめなくても良いレベルだったと思います。全体としてドラゴンクエストとファイナルファンタジーの曲が多くかかっていることから、スクウェア・エニックスの楽曲が圧倒的でした。
面白いのは2010年の時点では「スクウェア・エニックス」名義での楽曲はかかっていないのに、2014年にスクエニ名義のゲームが4曲ほど登場している点です。ちなみにファイナルファンタジーXIV・XIIIと、ブレイブリーデフォルトフライングフェアリーです。
また、「バンダイナムコゲームス」「DMM.com」「レベルファイブ」「エキサイト」は2014年になって初登場でした。
スクウェアやエニックスの曲が多くかかっているのにハードとしてはアーケードが多いことの理由に「ドラクエやファイナルファンタジーは複数ハードにまたがってリリースされている」という事が挙げられます。
「今日は一日○○三昧」、アニメソングは比較的定期的に放送されているのですがゲーム音楽は権利的な問題とかもあるのか第一回目からは相当間が空きました。次回の放送は果たしていつになるのか……放送前に個人的に配信とかではやりたいですけどね。