先日参加したP/S Rush!!でプレイしている最中、同時に映像を出力していました。これはPCDJソフトの「Serato DJ」に搭載されている「Serato Video」という機能を使いました。コードを購入しなくても、体験版という形で使うことができます。(全画面表示ができなかったり、ロゴがオーバーレイされたりする)
あらかじめ曲に関連付けておいた映像が自動で流れてくれて、フェーダーによる切り替えにも対応していて、なおかつエフェクトもかけられるという便利なものなんですが、結構クセのあるソフトで、Windows版に関しては設定やら操作方法やら用意する映像やらに気を使わないとまともに動いてくれないことがあります。
実際前日まで家でリハーサルしていた時も動画が止まったり、DJコントローラがおかしくなったりとトラブルに悩まされてしまいました。なんとなくMac版のユーザーが多そうなSerato Videoですが、Windows版の情報についてちょっとまとめました。
Serato Videoとは
まずSerato Videoについて軽く説明を。
Serato VideoはPCDJソフト「Serato DJ」に搭載されてる動画再生機能です。音楽に紐付けられた動画を動画ウィンドウに表示させることができます。Serato DJに標準でついてる機能ですが課金しないとデモ版扱いになります。とりあえず購入前に動作確認ができるので、気になる人は設定画面のプラグインから有効にしてみましょう。
要求スペックに関してはSerato DJの要求スペックと共通で、「Serato Video使うならビデオメモリ384MB以上(1GB以上推奨)必要だよ」とだけ書いてあります。
Mac | Windows | |
---|---|---|
OS | MacOSX 10.8~10.11 | Windows 7, 8.1, 10 |
CPU | Core i3: 1.07GHz 32 bit, 64 bit Core i5: 1.07GHz 32 bit, 64 bit Core i7: 1.07GHz 32 bit, 64 bit |
|
メモリ | 4GB | |
HDDの空き | 5GB | |
ビデオメモリ | 384MB(1GB以上を推奨) |
ちなみにSerato DJはAMDのCPUは保証外です。
また、私はDJプレイ時は下記の環境で動かしています。CPU使用率は30~60%を行ったり来たり、という感じ。
CPU | Intel Corei7-5500U (2.40GHz) |
---|---|
メモリ | 8GB |
ビデオカード | Intel HD Graphics 5500 |
動画フォーマット | 640px × 360px, 29.97fps, mp4形式 |
QuickTimeが入ってないと動かないSerato Video
ちょっと前にWindows用のQuickTimeに脆弱性が見つかりました。Appleも「もう更新するつもりないからさっさとアンインストールするヨロシ」と完全にサポートを投げてしまってます。(Mac版は問題なし)
Apple、QuickTime for Windowsのサポート終了を正式に告知していたことが判明 -INTERNET Watch
で、困ったことにSerato VideoはQuickTimeが入っていないと全く動きません。(これを書いている最新版Serato DJ Ver.1.9.1で確認)movだけ再生できないとかじゃなくて、全く動かなくなります。
なので、Serato Videoを動かす時は脆弱性があることを覚悟した上でQuickTimeをインストールして利用する必要があります。
ちなみにQuickTimeの脆弱性は「細工された動画をQuickTimeで再生すると、プログラムが勝手に実行され、外部からPCを乗っ取られる可能性がある」というものです。逆に言うと「自分で作成した動画(出処のはっきりしている動画)であれば、攻撃される可能性を抑えることができる」ということになります。
とはいえ、Serato Video以外の再生ソフトで動画を見るときにも気を使う必要が出てきてしまうので、非常に厄介です。これは早い所Serato側で対応してもらうしかないんですけどね……。
なお、このエントリーを書いてる段階ではQuickTimeのダウンロードは可能ですが、Appleが公開そのものをやめてしまうとSerato Video自体が使い物にならなくなりますので注意が必要です。
使ってみてわかったSerato Videoの厄介な所と対策
さて、そんなSerato Videoですが使ってみて色々と問題点というか、使いづらさみたいなものがいくつか出てきました。
外付けモニタで使うことが大前提の作りになってるっぽい
Serato Videoの動画ウィンドウ、かなり挙動があやしいです。
まず、外部モニタを接続しない状態で最大化すると、そのままウィンドウサイズが変えられなくなってSerato DJを含むPCの操作ができなくなり、電源ボタン長押しでWindowsを強制終了させなければいけなくなります。
また、Serato Videoを立ち上げた時に画面が下記の画面のようになってしまうことがあります。
これ、Serato Videoの動画ウィンドウを外付けモニタに最大化した状態でSerato DJを終了させると発生するみたいです。黒い部分のサイズは外付けモニタの解像度と同じになってしまうようです。
外付けモニタを接続した状態であれば黒い箇所をダブルクリックすればウィンドウ状態に戻るので、外付けモニタに最大化するなり、閉じるなりすればOK。
Serato Videoのウィンドウは実は任意の大きさに変えられる
Serato Videoのウィンドウはウィンドウ端にマウスカーソルを持って行ってもサイズが変えられないように見えますが、動画ウィンドウの隅をつまんでマウスをドラッグするとちゃんとサイズが変更できるようになっています。
動画の解像度を揃えておかないと挙動が怪しくなる
再生する動画は解像度を統一しておいたほうが安定するみたいです。
自分の場合、FullHDの動画を再生した後SD画質の動画を読み込ませたらそこから動画が表示されなくなりました。再起動しないと復帰できませんでした。
フレームレートは30fpsで揃えておいた方が良さそう
とある動画の特定の部分で再生がガックガクになる症状に見舞われました。その後音楽の再生を止めてもガクガクのまましばらく動画が流れ続け、フェーダーでも切り替えられない、という現象が起こりました。
該当の動画はフレームレートが24fpsになっていました。他の30fps(厳密には29.97fps)の動画は問題なかったので、変換しなおしてフレームレートを揃えたところ問題は発生しなくなりました。
「動画のデータをイベント当日現場でデータをもらう」といった時、上記の条件に当てはまってVJ部分が壊滅、みたいなことになる可能性がありますので、事前に打ち合わせておくか自分で全部データを用意するかしたほうがよさそうです。
自分の場合の動画フォーマットは640×360、29.97fps、mp4形式(条件付き)
あくまで自分がP/S Rush!!で使う場合の話ですが、解像度は640×360、フレームレートは29.97fps、そしてフォーマットはmp4形式を使用しています。ちなみにWindows Media(WMV)はSerato Videoでは使えません。
「640×360って、解像度低すぎない?」という方もいらっしゃると思います。ただ、FullHDを音楽と一緒に流すとなるとPCの負荷も高くなりますし、なにより動画のファイルサイズが巨大になってしまいます。ビットレートを下げてファイルサイズを抑える方法もありますが、下げ過ぎると通信状況の悪いニコ生みたいにブロックノイズが出まくってしまいます。
640×360でもビットレート800kbps(音声なし)、全画面表示で出せばそこそこ見られるレベルで出力できますし、何よりファイルサイズが数百メガ程度で済みます。ちなみに一般的なDVD-Videoの場合、720×480、音声と映像で合計10Mbpsが「最高レベル」です。
ただし上記は「垂れ流す」という条件付きです。CUEを打ってあちこちに飛ばしたりする場合、mp4の場合は一瞬ムービーが引っかかってしまうような挙動になってしまいます。これを避けるためにはフォーマットをmp4ではなくMotion JPEG形式にしておいたほうがいいです。(Motion JPEG形式のMOV、もしくはAVI)なお、Motion JPEG形式にした場合はファイルサイズがmp4の10倍位になってしまいますので、大量に動画をストックするには向いていません。
あらかじめ動画編集ソフトで編集しておくとタイミング合わせもバッチリ
Serato Videoで動画を表示すると、音の部分の進み具合と映像の進み具合が完全にリンクします。音の再生速度を落とせば動画もゆっくりになりますし、スクラッチプレイすればスクラッチに連動して映像もキュッキュキュキュッキューって動きます。
なので、あらかじめ動画編集ソフトで曲の入りとかサビに合わせて目立つシーンを入れておくと音と映像がシンクロして盛り上がります。
音ときちんと連動させる、という意味で動画編集ソフトはSony Vegasがおすすめです。もともとオーディオ用のソフトとして開発されていることから、波形を見ながら映像のタイミングをピタッと合わせることができます。もちろんmp4出力もできます。
ちなみに今回ハードボイルド~グリフォンの幻影~の「Phantom of your heart」を掛けましたが、映像はプロモーション用に作られた短編アニメを曲に合わせて再編集したものを使いました。カットごとの速度調整も簡単ですし、何より「軽い」というのがいいです。
アニクラ系の場合はクロスフェーダで切り替えるよりキーボードで切り替えるのがオススメ
Serato Videoはクロスフェーダや各deckのボリュームに連動して動画を切り替えることが出来るようになっていますが、油断すると「次の曲がかかる前に映像でネタバレしていまう」といったことが起こりがちです。
Serato Videoの動画はカーソルキーの左右でも切り替えられるようになっています。切替速度は設定で変えられますので、「曲がちゃんとかかってから映像を切り替えたい」なんて場合はキーボードでやっちゃったほうがいいでしょう。やること増えるのでなれるまで大変ですが……。
とりあえずデモ版でいろいろ試して、「安くなったら」買おう
一番最初に書きましたが、Serato VideoはSerato DJに標準で付いている機能なので、映像にロゴがかぶるなどの機能制限をガマンすれば課金後と同じように使えます。また、Seratoはちょくちょくセールをやるので、半年に一回くらいは半額くらいまで安くなります。(ネット決済なのでクレジットカード必須ですが)
とりあえずデモ状態でいろんな動画を試してみて、気に入ったら安くなるのを待ち、セールになったら飛びつく、なんてのもいいかもしれません。
情報はSeratoの公式Twitterアカウントをフォローしとけば十分でしょう。ちなみにこれを書いてる今はSerato Tool Kitが半額になってます。
Get Serato DJ Expansion Packs or the full Toolkit bundle for 50% off this week https://t.co/UtR0Z8gmZN pic.twitter.com/z4kPi50SXN
— Serato (@Serato) June 15, 2016
コメント
おつさん 詳しい情報ありがとうございます。過去に一度MAC購入して、使いこなせず、挫折、今度はハイスペックPC? 富士通でVIDEO DJに挑戦しようともくろんでおります。うちの息子がアニソンDJなんで、ある程度、作らせてそれを使おうと思ってます。色々聞きたい事あるんで、また質問してもいいでしょうか、私はDJとおる、YoutubeはDJとおる、FBはでぃじぇいとおるです。
コメントありがとうございます!
私もまだまだ始めたばかりで、VJに関しても色々と試行錯誤しているところです。この記事を書いた後にちょっとまたmp4のデメリットもいくつか見えてきたのでまた記事を書こうかと思っているところです。(まだ試行錯誤中なので書き用がないですが……)
なにかあればコメントなりフォームなり何なり書いていただければー!
え-まじっすか?今、ちょこっと反則技を考えているのですが、3000円くらいのDVDで洋楽MTVがMIXされているやつをばらして、VDJをしようと思っているのですが、Sony VEGASで切ったり、画質変えたり、可能でしょうか、うちの息子DJ始める前に同じようなDVD何枚も購入もっているんで、これは?使えると思案中です。昔はよく、NON STOP MIXのCDやレコードのおいしい部分だけ、使ってたんで、DVDでも切り取って、おいしい所だけ使いたいのですが?なんせセラートの質問コーナー、英語なんで、ちんぷんカんぷんでまったくわからないため、おつさんの記事非常にありがたいです。
コイズミ ヨシヤ様
Vegasは音のタイミングとあわせた編集に向いてるソフトですし、直接mp4で出力も可能なので特に問題ないと思います。
ただDVDは一般的にプロテクトがかかっているので直接Vegasで読み込むことはできません(HDDにデータを持ってきて使おうとしても読めないはず)
なのでDVDをPCで読み込んで編集して……というのはちょっと難しいですね……
ありがとうございます。まだ質問よろしいですか?セラートVIDEO DJ(DVSレコードとDVSCDJ)が2人居ると、片方のVDJが動かなくなる現象が出るようで、先日もとある箱でVDJが2人出たんですが2人ともMACで、1人のVDJができなくなるといった症状が出ました。そこの箱DJの方も原因がわからなく、ただよく発生するとの事でした。おつさんは、イベント等でこのような症状が発生した事がありますか?2台のセラートはEXFORM PCDJ SWITCHER PDS-1につなげて、切り替え行っています。めんどくさい質問ですいません。何か、対応方法あれば、教えて頂ければ幸いです。よろしくお願いします。
>コイズミ ヨシヤさま
PDS-1は確かオーディオ信号を切替えるだけのもので、ビデオ信号は直接関係しないのでPDS-1を使っていることが原因ではないと思います。
Seratoの音声部分が問題なくて映像だけ出力されないのであれば、ビデオ信号の解像度がフロアのビデオ機材に適合していないんじゃないかなと思います。例えば以前私がやったところだと1920×1080ではダメで、1360×768ならOK、といった具合でした。
いつもご丁寧に本当にありがとうございます。またよろしいですか?先日イベントで一緒になった方が、WINDOWSのインテルが入っているものはVIDEO DJ出来ないよと言われてしまいかなり落ち込んでいます。加工をWINDOWSでやって現場では、やはりMACを使うとの事でした。パイオニアのレコードボックスでVDJされている方は回りにおられますか?パイオニアなら世界標準ですし、今からセラートでなくレコードボックスの時代になると知り合いのDJも言ってました。レコードボックスなら、WINDOWSでもVIDEO DJ出来そうな気がするのですが…へんな問い合わせばかりで本当に申しわけございません。よろしくお願いします。
パイオニアDDJ-SX2 富士通FMV A53A3 セラートビデオを入れて MP4ファイルでやって見ましたが、カクカクどころか動かず、めちゃめちゃ凹んでいます。
>コイズミ ヨシヤさん
まず「Serato Videoはインテルのチップでは動作しない」は半分あっていて半分間違っています。動作はしますが、Serato側が「intelのCPUに内蔵されているGPUでは動作保証をしていない」が正解です。実際Seratoのフォーラムでは「GPU積んでなきゃ駄目」と書かれることが多いです。
ちなみに私のノートPCはintelのCPI内蔵GPUで動かしていますが、全く動作しないわけではないです。ただ、HD画質(1280×720)のmp4は安定性に欠けるので、640×360に小さくするか、H.264形式のmovにするかしたほうがいいです。(何故かmp4だと安定しないことが多い)
RekordboxはDJソフトとして使ってる人はいますが、ビデオ機能まで使用している人は残念ながら私の周りにはいません。なのでどれくらいの負荷がPCにかかるのかなどはちょっとわからないですね。
あと他にビデオ機能がついているDJソフトはVirtual DJがあります。アニクラのVJさんも比較的使っているソフトです。
rekordboxもVirtual DJも体験版でフル機能が一定期間使えるはずなので試してみるのがいいかと思いますよ。