山佐からスーパープラネットデラックスが発表されました。「スープラ」の愛称で知られたこの機種、オリジナルは山佐初の3号機で、豊富かつ一部変態的なリーチ目が出る機種ということで人気を博しました。
今回のスーパープラネットデラックスはノーマルタイプではあるものの、レバーオン、ストップボタン、マックスベットなど様々なタイミングで告知が入る完全告知機になっています。
「完全告知か」「リーチ目機で良かったのに」というような意見がTwitter上ではちょこちょこ見受けられました。既視感があるなぁと思ったんですけど、これ「ニューパルサーデラックス」の時にもこんな状態でしたね。ただ往年の機種のファンにしてみれば「そもそものゲーム性が大きく変わる」ということに対して抵抗があるのもわかります。
おそらく完全告知にすることでこういった意見が出ることは山佐も予測できたはずです。しかし、リーチ目機種のリバイバル機を完全告知機にしたのには何らかの理由があるはずです。
自分なりにリバイバル機種の傾向と、なぜ山佐がスープラを完全告知にしたかを考察してみました。
なお、あくまで私の憶測ですので、実際のメーカーの事情はそうじゃないかもしれません。あらかじめご了承ください。
メーカーはなぜリバイバル機種を作るのか
ここ3年間にリリースされたパチスロ機を確認してみたところ、全体の約1/3* がリバイバル機種です。ハナビやサンダーVリボルトのような「前作を完全再現」的なものもあれば、「シーマスター~ ララ、旅立ちのプレリュード~」のように名前だけついてて全然別物、という機種もあります。(* 1/3にはノーマルタイプじゃないリバイバル機も含まれています)
リバイバル機種がこれだけ多いのはそれなりにメリットがあるからだと思います。
コスト的なメリット
版権物は版権を取得し、利用するのにコストがかかります。また、BIG中に楽曲を流す場合はその使用料をJASRACに払ったりする必要も出てきます。また、演出用のアニメーションを新規で作成する場合は、そこにもコストがかかります。
オリジナルコンテンツの場合、権利はメーカーが所有しているのでその部分のコストは節約できます。
時間的なメリット
版権物の場合、演出用の映像やパネルのデザイン等ができたらチェックして貰う必要があります。チェックがNGだとその部分は作り直しになりますし、版元に勝手に映像を使ったら最悪台が出せなくなります。一発OKであればいいのですが、2回3回とチェックを挟んでしまうとかなりの時間がかかります。
オリジナルコンテンツの場合、このチェックを省けるので工程を大幅に短くすることができます。このことは「作っている間に規定や規制が変わってしまった」というリスクを避けられるという意味でも大きいと思います。
素材的なメリット
以前の機種を忠実に再現する、というタイプの場合は図柄や音楽、パネルなどはゼロから作るのではなく、以前のものをベースにすることが多くなります。ゼロから物を生み出すよりは労力は少なくて済むと思われます。
営業的・マーケティング的なメリット
「あの○○という機種が帰ってきます」という謳い文句が使えるので、打ち手側にもホール側にもある程度のインパクトを持ってアピールができます。ホールの担当者がアニメやゲームに詳しくない人の場合は、版権物よりも強力です。
とまぁ、比較的いいことずくめな感じがしますが、当然デメリットもあります。
もちろんリバイバル機種を出すデメリットも
元の機種が有名じゃないと効果が薄い
当たり前ですが元となる機種がそこそこ有名じゃないと意味がありません。ユニバ、山佐など3号機~4号機のノーマルタイプが豊富だったメーカーがリバイバル機種を頻繁に出してるのに、サミーがあまり積極的でないのはこの辺が理由なのではないかと考えています。
打ち手もホールも過度に期待する
当たり前ですが有名機種のリバイバルであれば、打ち手もホール関係者も期待します。このハードルは高く、名機のリバイバル機種であっても容易に超えられない高さで、アクロスのゲッターマウスやサンダーVリボルトなどは前人気の割に稼働にあまりつながりませんでした。
打ち手の「こうあるべき」という考えとメーカーの考えの乖離
リバイバルの機種が出る、となると打ち手としては「5号機で出来うるレベルでの完全再現」を期待します。アクロスのハナビやゲッターマウス等がそれに当たり、これらの機種は打ち手の期待もかなり高かったと思います。
逆に発表時点で根本的に仕様が変わってしまったものに対しては否定的な意見が目立ちます。ニューパルサーデラックスやスーパープラネットデラックスの完全告知に対してアレルギー反応を示した人も多かったようです。私も拒否反応までは行かないまでも、「えー、完全告知なのー」と思いました。
打ち手としては完全再現を望むが、メーカーは必ずしも完全再現してこない。もどかしいところではありますが、メーカーとしては再現「できない」んでしょうか。「しない」んでしょうか。
個人的には「しない」んじゃないかと思ってます。特に最近の山佐の場合は意図的に。
システムを再現して出しても稼働が長続きしないリバイバル機
ぶっちゃけ、リバイバルの機種を当時の完全再現でリリースしても、稼働にはつながらないと思います。導入直後こそ当時のファンの人がこぞって打ち込みますが、稼働状況を見る限り導入直後だけで、数日で稼働が落ちてしまっています。
レトロゲームなどでもそうですが、懐かしさがきっかけで遊ぶ人は、数回遊技しただけで満足してしまい、その後の稼働につながりません。実際B-MAXやサンダーVリボルト、ゲッターマウスなどは客離れが早く、導入翌週には空き台が普通に見受けられました。4号機時代に比べ機械割の違いや設定状況の違いもありますから、本来の面白さを見いだせないまま一回だけ打ってそれだけ、という人もいることでしょう。
となると当時の打ち手以外の人、いわゆる「5号機世代」の人たちに打ってもらうしかないのですが、ビタ押しができないと獲得枚数が減るというタイプの機種は今の人にはハードルが高いと感じるようです。そもそも機械割自体が技術介入できることが前提で表示されていて、「ビタできない人は損する」ということだと、やはり足は遠のきますよね。
稼働を付けたいからこそ出てきた最近のノーマル機の傾向
ここ数年のノーマル機の傾向を見るとこんな流れがあると思います。リバイバル機の話というよりはノーマル機全般の話になりますが。
- BIG中いつでも、もしくは高頻度で逆押し+2コマ目押し程度の技術介入がある
- 告知付き(完全告知or数ゲーム後に告知)
- ボーナス察知がリーチ目だけ、ということはほぼない
- BIG確定の告知、もしくは重複役がある
- 設定判別用の数える小役がある
- 連チャンすると曲が変わるなどのプレミア感のある演出がある
この内、告知が付いているものはボーナス成立ゲーム、もしくは揃えられるゲームでの「完全告知」が増えてきています。上述の「機械割下がるのが嫌」ということへの対策なんでしょうが、スーパープラネットデラックスもこの流れに乗った形での「完全告知」だったのではないかと思います。
山佐は若い人も意識してリバイバル機でも「完全告知」を取った
山佐はニューパルサー3やニューパルサーVなどの「告知のないリーチ目主体のノーマル機」と、プレイボーイやピカゴロウなどの「告知のあるノーマル機」を平行してリリースしてきています。それらの稼働や打ち手の反応を長年見てきているはずです。
その後、告知と出目どちらでも楽しめる「ニューパルサーSP」を経て、「今の打ち手にはリーチ目機よりも告知機だ」という結論になって出たのが「スーパープラネットデラックス」「ニューパルサーデラックス」なのではないでしょうか。
正直若い人たちにとって、リーチ目主体の台は受けないと思います。見落とせば損をしますし、覚える出目も多い。出目を覚えたくても攻略誌にはリーチ目リストみたいなものはないし、覚える頃には台がなくなっていることだってある。5号機時代になってから10年以上が経ち、リーチ目マシンを知らない人がどんどん増えていく中で山佐が取った手段は、「リーチ目で魅せる台」ではなく「完全告知の台」だったということです。
今後のリバイバル機種にリーチ目主体の機種が増えるかどうかは「稼働次第」
完全告知の台が増えたのはいわゆるマーケティングの結果です。打ち手が打ちそうな台、ホール視点で言えば稼働がついて売上が上がりそうな台を検討した結果として「リーチ目機種より完全告知」という答えが出て、そういった機種が出ているのが現状でしょう。
今後「やっぱりスロットといえば滑りだよね!」みたいな流れが強くなればそういう機種が出るでしょうし、「技術介入ないとスロットじゃない」みたいな流れが強くなればビタ押し技術介入機が出てくるようになる。結局稼働次第なんです。
リーチ目主体の台が今後増えていくためには、それらの台の稼働がつくことをデータでメーカーに知らせてやる必要があります。言い方はアレですがリーチ目台の稼働がすごいというデータを叩きつけてやれば「リーチ目台は儲かるんやで!」とばかりにメーカーは開発を、ホールは導入をするわけです。なによりも稼働、ですね。
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